上司から「問題意識を持て」といわれて困っていませんか。
「何が問題なのかわからない」
「そもそも問題があるのかないのかもわからない」
そんな悩みを持った人は、実はたくさんいます。
そんなあなたのために、体系的な問題発見の方法や、職場の問題を見つけるポイントを解説します。
本記事を参考に、職場の問題を見つけて改善につなげましょう。
そもそも問題とは何か
問題とは、一言で言うと「あるべき姿(目標)と現状のギャップ」です。
したがって、あるべき姿と現状にギャップがなければ問題は存在しません。
また、目標がない場合も問題は発生しません。
あるべき姿(目標)があり、現状がともなっていない場合が、「問題がある状態」です。
例えば次に示すように、職場における問題には様々なものが考えられます。
事象(問題) | 現状 | あるべき姿(目標) |
---|---|---|
提出書類の締め切りを守らないメンバーがいる | 締め切りが守られない | 締め切りが守られる |
チームで開発したアプリで不具合が多発している | 不具合が多発する | 不具合が発生しない |
売り上げが目標の70%程度しかない | 売り上げ実績 | 売り上げ目標 |
あるべき姿の切り口によって問題の捉え方は変わる
問題とは現状とあるべき姿のギャップなので、あるべき姿をどう設定するかによって問題の捉え方は変わってきます。
例えば次の事象を考えてみましょう。
開発中の製品の機能Aは使い勝手が悪い。
このまま出荷したらお客様からクレームが来るかもしれない。
この場合、問題の捉え方は次の2通りがあります。
あるべき姿 | 現状 | |
---|---|---|
パターン1 | 機能Aの使い勝手が良い | 機能Aの使い勝手が悪い |
パターン2 | お客様からクレームが来ない | お客様からクレームが来る可能性がある |
そして、問題の捉え方が変われば対策も変わってきます。
- パターン1の場合の対策:機能Aを改良して使い勝手を向上させる
- パターン2の場合の対策:機能Aの使い方をマニュアルで詳細に説明するようにする
このように、あるべき姿を設定する切り口によって、問題の捉え方や対策が変わってきます。
問題のタイプ(潜在型と顕在型)
問題には次のタイプがあります。
・顕在型
ギャップがすでに露呈している問題を顕在型と呼びます。
先ほどの例で言うと、機能Aの使い勝手が悪いというギャップは顕在型の問題です。
・潜在型
今はギャップがなくても、将来ギャップが発生するであろう問題を潜在型と呼びます。
お客様からクレームが来る可能性があるというギャップは潜在型の問題です。
「問題」と「課題」の違い
「問題」とよく似た言葉に「課題」があります。
この二つは混同されがちですが、別の意味を持っています。
【問題】
あるべき姿と現状とのギャップ
【課題】
ギャップを埋めるための施策(問題を解決する方向性)
例えば、先ほどの「機能Aの使い勝手が悪い」という例の場合、「問題」と「課題」はそれぞれ次のようになります。
問題(あるべき姿と現状とのギャップ) | 課題(ギャップを埋めるための施策) |
---|---|
機能Aの使い勝手が悪い | 機能Aの使い勝手を向上させる |
お客様からクレームが来る可能性がある | マニュアルで機能Aの説明を充実させる |
本質をついた問題を発見する4ステップ
本質を突いた問題を発見するための方法は、次の4ステップです。
ステップ1:あるべき姿を的確に描く
あるべき姿は問題を定義するときの前提です。
あるべき姿を的確に描けていなければ、現状とのギャップを正確に把握できません。
あるべき姿を的確に描くためには、あるべき姿を文章で表現します。
これはとても重要です。
あるべき姿のイメージに曖昧な部分があると、文章化しようとしてもうまく言葉にできません。
文章化により、あるべき姿の曖昧な部分に気づけて、的確にあるべき姿を定義できるようになります。
文章化するときは次の2点を意識すると、より的確になります。
- 5W2H(いつ、どこで、だれが、何を、なぜ、どのように、どのくらい)で表現する
- 数字を使う
また、文章化することには次のメリットもあります。
- 文章を共有することで、関係者全員の認識を一致させられる
- 文章に残すことで、時間がたってもあるべき姿の定義を思い出せるためブレない
例えば「機能Aの使い勝手がよい」というあるべき姿を的確に表現すると次のようになります。
お客様が製品を使うときに迷わず操作できること。
そのために、機能Aは2ステップの操作で実行できること。
「使い勝手が良い」という曖昧な表現を「2ステップの操作で実行できる」という具体的な言葉にすることで、あるべき姿がより的確になり、関係者全員が一致した目標を認識できるようになりました。
あるいは次のようにも定義できます。
お客様が製品を使うときに迷わず操作できること。
そのために、マニュアルで機能Aの実行手順を1ステップごと詳しく説明すること
この2つは、どちらか一方が正解でもう一方が不正解という物ではありません。
企業の状況や、製品の性質、かけられるコスト、関係者の想いなどにより、あるべき姿は異なります。
ステップ2:現状を分析する
あるべき姿を的確に定義できたら、あるべき姿の対照となる現状を分析します。
あるべき姿が的確に定義できていれば、現状分析で何を分析するかは明確です。
あるべき姿が、
機能Aの実行は2ステップで操作できること
と定義されていれば、「現状は何ステップの操作になっているか」を分析します。
もし、あるべき姿が、
マニュアルで機能Aの実行手順を1ステップごとに詳しく説明すること
と定義されていたなら、「現状はマニュアルにどう記載してあるのか」を分析します。
現状を分析できたら、現状の姿も文章にしましょう。
あるべき姿のときと同様で、文章にすることで曖昧さを排除でき、関係者全員の認識を一致させられます。
ステップ3:現状とあるべき姿のギャップを解明する
あるべき姿と現状を比較し、ギャップがあるかどうかを解明します。
例えば、機能Aの実行は2ステップで操作できることというあるべき姿に対して、現状が3ステップの操作になっていれば、ギャップは次のようになります。
機能Aの操作が1ステップ多い
このギャップが、すなわち「問題」です。
ギャップの解明で使うフレームワーク:As-Is/To-Be分析
ギャップ分析の際にはAs-Is/To-Be分析を使います。
As-Is/To-Be分析とは、あるべき姿(To-Be)と、その対照となる現状(As-Is)を並べて文章で書きだすフレームワークです。
あるべき姿の定義が複数ある場合は全て書き出し、現状分析の結果も並べて書きます。
並べて書くことでギャップが見えやすくなります。
また、あるべき姿が複数ある場合に、対照となる現状が洗い出せているか、現状分析にモレがないかを目視で確認できます。
ステップ4:問題を深掘りする
ギャップ分析によりギャップ(=問題)が定義できたら、問題の本質的な原因を見つけるために要因を深掘りします。
「機能Aの操作が1ステップ多い」を問題として定義した場合は、「なぜ1ステップ多いのか」を掘り下げます。
- 製品の仕様を定義した時点で1ステップ多かった
- 仕様はあるべき姿とギャップがないが、製品を作り込む時に1ステップ多い実装になってしまった
など、1ステップ多い理由にはさまざまな要因が考えられます。
これらの要因を一つひとつ掘り下げ検証することで、その問題の本質的な原因を見つけることができ、効果が高い対策が立案できるようになります。
問題分析の深掘りで使うフレームワーク:なぜなぜ分析
問題の深掘りでは、なぜなぜ分析がよく使われます。
なぜなぜ分析とは、問題を発生させている要因に対して、「なぜその問題が発生しているのか」を繰り返し問うことで、問題の要因を深く掘り下げ、本質的な原因を見つける手法です。
なぜなぜ分析を効果的に行うポイントについて、以下の記事で詳しく解説しています。
職場の問題を発見する具体的な3つのポイント
職場やチームの問題を発見する場合、次の3つのポイントであるべき姿の定義や現状を分析すると、問題が発見しやすくなります。
ポイント1:いつも忙しそうな人に注目する
いつも忙しそうにしていて余裕がない人や、常に時間に追われている人は一見すると頑張っているようにも見えますが、そこには何かしら解決すべき問題が潜んでいることがあります。
例えば、仕事の取り組み方や段取りが悪いために作業に無駄な時間がかかっていたり、前もって情報を伝えておくべき人に情報を伝えていなかったためにスケジュール通りに作業が進んでいなかったりなどです。
その人が忙しくない(残業が月10時間以内など)というあるべき姿を設定して、現状とのギャップを深掘りすることで、問題を発見できるかもしれません。
その人自身に問題がなくても、仕事の割り振りの仕方が悪いなどのマネジメントの問題が見つかる可能性もあります。
ポイント2:新しく入った人に聞く
同じ職場やチームに長くいると、本来は問題として認識するべき状況を当たり前と感じるようになってしまいます。
いわゆる「慣れ」です。
新たに職場やチームに配属になった人に、率直に職場の印象や業務の進め方への感想を聞いたりすることによって、慣れた人では気がつかない問題を発見できる可能性があります。
ポイント3:他のチームと比較する
「慣れ」に対抗するもう一つの手段として、他の職場やチームの状態をあるべき姿と定義して、自分の職場やチームの状況を分析してみる方法があります。
他の職場と比較することで、自分の職場の方が生産性が悪いとか、スケジュール遅れが多いといったギャップが見つかり、職場の問題を発見できる可能性があります。
まとめ
本質をついた問題を発見するための4ステップや、職場の問題を発見する3つのポイントを解説してきました。
- ステップ1:あるべき姿を的確に描く
- ステップ2:現状を正確に把握する
- ステップ3:現状とあるべき姿のギャップを解明する
- ステップ4:ギャップを深掘りする
このステップを踏めば、「何が問題なのか」「そもそも問題があるのか」が明確になります。
上司に、職場の問題を論理的に説明できるようになるでしょう。
すぐれた問題解決の第一歩は、すぐれた問題発見からです。
本記事を参考にして、すぐれた問題発見ができるようになりましょう。